異形土器展シンポジウム報告:日本列島、縄文後期社会に何が起きた? 10/5 森のホール
開催中の企画展{異形(いけい)土器「縄文時代の不思議なうつわ」}を記念した全国レベルのシンポジウムが、10/5(土)、森のホール21レセホールで開かれました。渡辺尚志館長のあいさつ、西村広経・当館学芸員の趣旨説明の後、5名の先生方のお話がありました。各先生のお話は、難しかったものの、”土器の動向や分布から縄文時代後期中葉に、全国レベルで画期的な変化が認められること”、”広域的な地域間関係の変化が生じている”との説明がありました。”異形土器のように祭祀・儀礼に用いられたと考えられる器種が、広域に分布するようになった”との指摘には、特に興味深いものでした。 とくに、福永将大先生(九州大学総合研究博物館)のお話が印象に残りました。{…物言わぬ物質文明から過去を復元する考古学において、諸変化の背景や要因を明らかにすることには、困難をともなう。土器をめぐる諸現象において、特に、今企画展示Ⅱ期・縄文時代後期中葉に、列島規模で「画期」が認められる、ことを示すことが出来た。しかし、その画期的現象が生じた背景・要因については、明快な回答を得ることができたとは言い難い。縄文時代後期中葉の日本列島で何が起きたのか?, 当時の人々は何を考え、どのように行動し、日々の生活を送っていたのか?。今後も物質文化の分析・考察を深めつつ、課題解決に向けて努力していく必要がある。その営みにおいて、縄文土器が重要な分析ツールの一つになることは、間違いないだろう。…} 以下、5人の講師のレジメ項目ですー ●基調報告「広域に広がる儀礼用土器の世界」中村耕作先生(国立歴史民俗博物館):1₋土器からみた地域制形成、2₋土器のバリエーション、3-広域に移動する器種・タイプ、4₋注口土器・異形台付土器・香炉型方土器の異形化・顔身体化、5₋その出土状況にみる重要性。 ●「東日本の縄文後期中葉土器群と異形土器」西村広経先生(松戸市立博物館):1₋東日本における縄文後期中葉の広域編年案、2₋異形土器、3₋土器からみた縄文後期の社会変動。 ●「西日本の縄文後期中葉」福永将大先生(九州大学総合研究博物館):1₋縄文時代後期中葉の西日本/(1)西日本における東日本系土器の動向・(2)西日本広域土器分布現象の変質と近畿系注口土器の広域分布現象、2₋縄文時代後期中葉における画期の背景。 ●「注口土器からみた関東および周辺地域の縄文後期から中葉の様相」吉岡卓真先生(さいたま市教育委員会):1₋後期初頭ー称名寺式、2₋後期前葉―堀之内1式、3₋〃堀之内2式、4₋後期中葉₋加曽利B1式、5₋〃加曽利B2式、6₋〃加曽利B3式、7-後期前葉~中葉の異形注口土器。 ●「西日本における注口土器の動向」渡辺幸奈先生(京都大学大学院):1₋西日本の注口土器の動向、2₋西日本における注口土器の画期、3₋高井東遺跡・井野長割遺跡出土『近畿系注口土器』の位置づけ。 以上です。松戸市立博物館企画展{異形土器「縄文時代の不思議なうつわ」}は11/4(日)までです。一般310円。 https://sketchfab.com/Мatsudo-Мuseum 報告記・佐藤俊晴(当会会員・考古の会—*考古の会員を募集中です、毎月第3水曜・午後、博物館実習室です。) |