秋の日差しのなか、11/6(土)、近くの{21世紀の公園}と「森のホール}では、初めての「まつど音楽フェスティバル」でにぎわい。博物館では、小林孝秀・学芸員による「古墳時代の祭祀(さいし)と儀礼」の講演会。こちらも、50席満席。倍の申し込みの抽選結果でした。開催中の企画展示『古墳時代のマジカルワールド』への第2弾、担当者としての講演会でした。友の会との共催講演会。約30遺跡・古墳など豊富な資料を紹介し、解説をされました。その一部を紹介します。―
⦿…今回の企画展の名称である{マジカル・ワールド}とは、呪術的・魔術的・幻想的といった意味でして、古墳時代の日本人は、信仰・死者への葬り・埋葬・儀礼などが、現代人からみれば"異様"にみられることです。自然の脅威や人の死に、マジカルに乗り越えようとしていたのでした。古墳が持つ墓の意味とか、当時の死生観、精神世界を出土資料から探り出そうということです。
⦿展示会場では、
Ⅰ 神まつりの世界―山や巨石、水や河川といった自然への働きかけ、うやまう信仰心を紹介。そこからは、ミニチュアともいうべき土製や石製の器・食器・勾玉形・臼形など、また勾玉、木製の儀杖どが発掘されている場所もある。
Ⅱ 古墳と儀礼―古墳の出土品の中に、銅製の鏡やアンモナイトを輪切りにしたような車輪石といった副葬品が見られだす。葬送儀礼がはっきり見えだすのは奈良県桜井市の三輪山に近い箸墓(はしはか)古墳といえる。前方後円墳である。特殊器台(きだい)と呼ばれる円筒の土器の上に、壺を載せた埴輪が見られる。その後、各地の古墳からも、本来の用途の実物を真似た石製模造品(実際に、古墳からの出土品!)が出土する。千葉県からのみ出土品では、埋葬者への「石枕(いしまくら)」と、それに穴を穿ち「立花(りっか)」という石製の飾り物をさし込んだりしたらしい遺物。印旛・手賀沼辺だが、松戸の河原塚古墳では見られない。
Ⅲ 埴輪の世界―埴輪(はにわ)は、どれも似たようにみえるが、人物埴輪をとっても、その恰好、形状、服装、手の位置など特色がみられる。松戸からの出土埴輪は群馬県方面から運ばれてきたものと見られる。埋葬者の勢力とのつながりが認められる。
⦿4世紀後半以降、竪穴式から横穴式石室という墓制が伝わってきたようだ。5世紀には九州・近畿を中心に、さらに6世紀には日本各地にみられるようになった。そこには、{黄泉(よみ)の国}という他界観の影響がある、という意見もある。6世紀中ごろには、「仏教」が伝わり、新たな宗教観から寺院の建立が始まる。古墳時代が終焉になる一因ともなり、儀礼・祭祀も変化していく。7世紀の飛鳥時代には、「終末期の古墳」、従来からの「神道」、伝来の「仏教」との三者が、次の古代へと至る{信仰と儀礼}になっていくと思える。
日頃の、われわれの何気ない生活のなかにも、各種のマジカルがある!ということ。ワレラの祖先たちが、脅威や死にどう向かい合ってきたか、現代に生きるわれらが、自然災害、環境問題、新型コロナウイルスなどの脅威、人の死に、どう乗り越えていくか、メッセージを読み取ってほしい。(聞き手・松尾、(小))