講演会報告:「北国からみた松戸の縄文時代」西村広経/学芸員 2/13終わる

更新日:2022/12/26
掲載日:2022/02/15

 雪になるかもという冷え込み、雨の中。2/13(日)午後、西村広経学芸員による「北国(きたぐに)からみた松戸の縄文時代」の講演会がありました。友の会共催事業、定員限定の30人余の参加者は、市内と市外から半々でした。縄文時代は1万5000年くらいの期間があるなか、後期の3700年前ごろの"400年ほどのお話です"ということでした。西村講師は松戸市立博物館の学芸員としては、"初デビュー"の講演でもありました。
 "縄文時代の時期6区分は、土器の形や文様の変化などから、世界的にもくわしい『土器編年表』が作られてきてます"、"関東平野では、加曾利B式(かそりビー式)土器というのが、広くみつかっています。B1式・B2式・B3式へと移り変わっていくのですが、とくにB2式とみられる土器は、北海道から東北、関東と広く分布しています"。つまり、「縄文時代後期に相当する3700年前ごろの松戸の土器は、同じ時期の北海道や東北の土器ととてもよく似ている。よく似た土器が発掘されるということは、土器作りに関わるルールや技術が共有されていたことを意味し、地域集団間になんらかの交流があった?」ということに。
 各地の土器の形や文様の映像をみながら、北海道、東北、関東の交流、松戸のかかわりを探るお話でした。前半は、土器に描かれた矢羽根状の形の類似や変化から、各地域の出土品の紹介へ、とくに「加曾利B2式(かそりビー2しき)」のひろがりへ。後半は、そのB2式の頃に、「異形土器(いけいどき)」と呼ばれる胴部分に穴のある突起がある土器と、「釣り手/香炉型」と呼ばれる土器とが、突然出現し、分布した事。今後の課題として、この用途の不明な土器を含めてB2式土器の広がりの内容や、その当時、気候変動もないのに全国的に人口減少が起こっていること、を指摘されました。
 以下、講演の一部からです―-
〇…縄文時代とは、いつから始まり終わったのか?のことですが、土器の出現からみると1万6500年前ごろから、水田稲作の弥生時代
  頃までとみておきたい。今回のお話は、縄文時代を前・中・後期と分ければ後期のうちの400年くらいのわずかな時期のことです。…
〇関東の後期中葉の土器群の移り変わりでは、加曾利式土器のB1式・B2式・B3式の特長と、同じころの北海道・東北ではどうだったか  
 のことです。…関東東部(千葉・松戸など)の加曾利B2式土器に見られる「斜線文(しゃせんもん)」は、北海道・東北の土器の影響を受け
 ている。ただし、東北の土器の要素を全て受け入れて同化したわけでなく、特定の文様を選択し、変形させて受け入れている。
〇「異形台付土器」と「釣り手/香炉型土器」という二つの変わった土器が、加曾利B2式の時期に突如出現してきますが、2種類とも東日本
 の広い範囲に分布しており、千葉県あたりで分布密度が高いのです。
〇加曾利B2式の時期、人口減少がみられ、竪穴住居跡が急激に減っています。後期前葉の特殊なお墓(環状列石、多数合葬、再葬墓な
 ど)は加曾利B1式までで姿を消し、後期中葉ごろからのお墓(B2以降?)は、大型竪穴住居や環状の盛り土がみられ、土偶や石棒など
 お祭り・儀礼のものになっていきます。
〇加曾利B2式はバリエーションが全くちがい、東日本では一気に広がっている。島根県で見られたりする。なんでこの時期に広がったのか
 わからない。気候変動もみられないのに、人口減少がおおきい。土器からだけでなく、松戸も含めて日本列島の変化を課題にしたい。
(聞き手・松尾)

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