講演会報告:「寄贈・奥井俊美シルクロードコレクション」大森隆志/学芸員 2/27終わる   

更新日:2022/12/26
掲載日:2022/02/27

 2月27日(日曜)午後、博物館講堂で、「寄贈・奥井俊美シルクロードコレクション」と題して、大森隆志学芸員による講演会がありました。友の会との共催事業。一昨年3月、流山市在住の奥井俊美(おくい・としみ、故人)さんから、イスラム陶器など313点が当松戸市立博物館に寄贈がありました。寄贈品はイラン・エジプトなどの西アジア地域やタイ・ビルマ・ラオスなど東南アジア地域の考古資料です。
とくに、8世紀~14世紀のイランの陶器、いわゆるイスラム陶器が70点余あり、この日の講演も主に、これらの陶器の特長を画像から、紹介されていきました。一部の「鳥文鉢(ちょうもんばち)」・「群鳥文様(ぐんちょうもんばち)・色絵人物文鉢(いろえじんぶつもんはち)は、{松戸市立博物館・奥井俊美コレクション―}ネットでご覧できます。
 
以下、講演の一部からです―
〇もともとは、流山市在住の奥井さんは地元の流山市立博物館へ寄贈の相談をされました。同館では、{松戸の博物館にはシルクロード関連の遺物収集の経緯があること}から、奥井さんのコレクションは松戸市に寄贈されることになった経過がある。寄贈手続きが最終的に決定した2週間後、2021年3月に、奥井さんはお亡くなりになりました。せっかくの寄贈品について、収集への聞き取りの機会を失ってしまったこと、新たな寄贈により松戸市の同時代の収集品は、一挙に充実さを増すことになったこと、奥井さんの家族には紺綬褒章が贈られ、感謝のお礼がなされたことです。
〇{なんで、松戸市の博物館に、イスラム陶器に関連した陶器類があるのか?}は、博物館の建設以前に、もともとは美術館の建設構想が先にあったこと。1970年、80年代、シルクロード関連に関心が高まっていて、美術館建設話とともに収集品として購入がすすみだしていたことによる。{美術館構想が見直され、博物館建設となって今日に至っている}。今回の寄贈品により、{市レベルでこれだけの西アジアの歴史的な陶器類を所有する稀な博物館となった}といえる。
〇{300点余の数の多い寄贈品を整理すること}は、たいへんなことで、対応しきれていないのが残念でいる。{メインのイスラム陶器70点余をどう分類していくか}も考えさせられる。作られ方とか、形とか、色からとか、文様とか。(以下、配布資料とともに個々の陶器の特色を、ひとつづつ、説明―略)。銀化作用によって壺の表面に白いぼつぼつが生じて来るとか、絵柄として鳥が描かれている、水草も多い、文字をデザイン化したもの、光が内側から透けてみえる器とか。例:写真2-「白彩上エナメル彩人物文鉢」。
〇奥井コレクションには大きな壺というのはない。大きな壺は、実用品として作られるので、美術コレクターの奥井さんには関心を呼ばなかったのか、あるいは、イラン革命もあったりして持ち出せなかったのかも。{欧米人には興味を持たれる金属色のラスター彩陶器も少なく}、ガラス器も少ない。こうした収集品の種類が、他の博物館や学術調査による収集品や調査団のものと比較してみることもテーマになることだ。日本人向けの現地の古美術商との関連や反映も調べたいことになる。
〇日本国内でイスラム陶器の発掘される場所には、九州北部の福岡辺りと平城京跡に見られる、貿易にからむ場所と言える。役人が政務を執る場所からではなく、個人の私物としてらしい。鴻臚館(こうろかん)、平城京跡西大寺、兵庫県の法隆寺系の寺などの遺物でみられるが、改めて、イスラム系の陶器の破片かどうかの再調査をすれば、もっと全国に広がるかもしれない。
〇イスラム陶器を理解するには、鑑賞できるところはかぎりがある(*一覧表を配布)。常設としては、東京国立博物館東洋館、横浜ユーラシア文化館、古代オリエント博物館、多治見の「幸兵衛窯古陶磁資料館」(窯元)、天理大学付属参考館、九州国立博物館などがあげられる。
〇今後、奥井コレクションをどう発表していくか、お披露目の展覧会を準備しているので、近日にはお知らせしたい。
  (聞き手・松尾)(О)

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