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学芸員講演会報告:{「プラスチックと経済成長」の時代をふりかえる}山田尚彦学芸員 1/15

更新日:2023/02/14
掲載日:2023/01/15

毎年、給料が10%~30%上がっていた時代がありました、ほんと!いま50歳~60歳位の方が産まれたころの時代、日本の”高度経済成長の時代”と呼ばれています。
1960年(昭和35)~1973年(昭和48)頃です。今回の講演テーマは、{プラスチック関連資料から―ふりかえる高度経済成長の明暗―東京都と企業の映像資料を題材にして}です。博物館に寄贈されたプラスチック関連の資料から、当時の{一つの製造企業の発展とその時代の公害問題とをふりえる}という内容。

以下、講演内容からです―
〇中村次雄氏から、10数年前、プラスチック関連の資料が寄贈され、今年度中に館蔵資料目録として刊行されます。 中村氏は、1932年の生まれ。1955年東京芸術大学図案科を卒業。素材としてプラスチックの可能性に期待して、積水化学工業に入社。後に、千葉工業大学工学部教授に就任し、2003年退任。2014年には、企画展『高度経済成長とプラスチック」として山田学芸員によって紹介されている。
〇今回は、前半、中村氏が、ジェトロから派遣されて、アメリカに1年間留学したおりの市場調査、現地のプラスチック製品の数ゝを紹介。次に、積水化学の発展とプラスチック製品の拡大例を、写真説明で追っていく。会社設立の1947年には、セーラーの万年筆、1950年セロハンテープ、1955年水道管の塩ビ管継手、雨どいのプラスチック、1957年ポリバケツ発売…一般住宅に軽量鉄骨(セキスイハウス)へと。軽い、錆びない、日光に強い、加工が容易、色彩が豊富というプラスチックの利点がみられる。そこには、大量生産、大量消費の時代の表れが見られること。
〇最近、企業の製作した{これが弊社のお宝映像}として、自社PRの映像が、”歴史資料”として見直されている。一例としても、積水化学製作―『プラスチック』(1961,岩波映画)・『セキスイ』(1962、同)を上映。会社の発展、製品の紹介、全国に各種工場などの他、企業内学校のことも。「積水化学高等工学院」のこと。工場の技術者は、中卒で工員となる道が主流であったが(”金の卵”と呼ばれた時代)、高校進学率が上昇してきたため、各種学校として高卒扱いになるように、2~3年間の課程で実習を重視しながら、意欲・知識向上の教育が行われた。
〇後半は、経済成長とともに噴出した公害の時代でもあったこと。環境基本法では典型7公害―大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、悪臭、地盤沈下など。ここでは、東京都の環境行政、とくに1964年の東京オリンピックの頃、ゴミ問題をとりあげる。職員がちりんちりんと鐘を鳴らしながら、大八車の箱車が町内、街路を廻って塵芥(台所ごみ)は収集されていた。1957年、積水化学はポリエチレン製のバケツ「ポリバケツ」を発売。1961年、東京都清掃局に大型の蓋付きごみ容器の「ポリペール」を提案。試験的に導入されていき、定時収集が可能、拡大していくことにもなった。(聞きて・松尾)*お話は、清掃問題、埋め立て地問題、ごみの処理へと厳しい課題解決へと続きました。時間いっぱい、高度経済成長の時代を映像で思い出されつつ、現在、プラスチックと云えば、海洋汚染、生き物被害、悪循環が環境への大問題へ。華やかに、便利に登場した素材が、いまや”やっかいな存在へ”と。

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